睡眠中に食べてしまう悩み
眠る直前や、一眠りした後に、何かを食べてしまって困っているというのは、比較的よくある悩みです。食べたことを、本人も全く覚えていない場合と、意識はあって記憶もあるけれど、食べるのをやめることができない場合の両方があります。また、この二つが混ざっていることもあります。
睡眠関連食行動障害 SRED sleep-related eating disorders は、眠っている間に食べてしまうもので、多くの場合、記憶がありません。
夜間摂食症候群 NES night eating syndrome は、夜になると、食べてはいけないと思っていても食べてしまうものです。自覚もあります。
これらの状態は、私がホームページを通じて相談を受けただけでも、既に10人以上になります。女性に多いのですが、1例だけ男性の方もいました。SREDの場合には、本人は自覚も記憶もありませんが、実際に起き出して食べている時に、話しかけられれば、ある程度普通に受け答えができる人が多いようです。ですから、レム睡眠時行動障害などとは異なり、覚醒はしていて、その後、順行性健忘により忘れてしまうのだろうと考えられますので、ノンレム睡眠に引き続いて起きる覚醒障害性の寝ぼけ行動と考えられます。食べる回数は、ときどき起きる人もいますが、毎日、それも1回だけでなく、2-3回食べてしまう人も多いようです。さらに、たとえばフライパンを使って料理をしたのに覚えていないというような場合もあります。何年にも渡って、症状が続いている人もいます。
症状としては、時々少し食べるだけなら、本人は気持ちが悪くても、実際上の問題は少ないのですが、たくさん食べてしまう場合は、肥満の原因になったり、回数が多いと、睡眠不足で日中に眠気が出たりします。
原因については、現在のところわかりませんし、教科書的な良い対策もありません。ダイエットのため、夕食を抜いたり、全体的に食べることを制限していて、それが潜在的な食欲を引き起こしていると考えられる人もいますが、まったく本人はそのようなことに無頓着な場合もあるようです。
対策は、残念ながら、決め手となるものはありません。自分で食べ物を隠しても覚えていて出してしまうので、家族に隠してもらう場合もありますが、それでも、どこかから探し出してきて食べてしまったりすることもあります。また、空腹で起きてしまう場合、眠る直前に、少し腹持ちの良い夜食を食べることが効果があることもあります。
また、起きる時間が決まっている場合(だいたい就眠後1-2時間の、最初の睡眠周期が終わった段階)は、この時間に起きないように、少し長く効くタイプの睡眠薬を飲むことも可能です。ただし、症状を悪化させる睡眠薬も多いので注意が必要です。
また、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害、または眠る前の抗うつ薬・タバコ・カフェインなどの睡眠を浅くする病気や薬の影響で、睡眠が浅くなり、このような寝ボケが起きることもあります。その場合には、これらの病気の治療や、薬を避けることが効果的です。
薬物治療としては、トピラマートという抗てんかん薬、マジンドールという抗肥満薬などが効果があるとされています。
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