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中川財務大臣から学ぶ

睡眠障害の観点から、中川大臣のエピソードから学ぶべきことが三つあります。
一つは風邪薬のこと、もう一つはアルコールのこと、そして時差ボケのことです。

まず、風邪薬についてですが、市販の多くの総合感冒薬には「眠くなるタイプ」の抗ヒスタミン薬が入っています。そして、これらの抗ヒスタミン薬による眠気(専門的にはインペアード・パフォーマンス)は、実は、お酒以上にひどいものです。ですから、飲酒運転が禁止されている以上、抗ヒスタミン薬を飲んだら運転が禁止されても本来は当然です。そのため、眠くならないタイプの抗ヒスタミン薬が開発されていますが、今のところ、医師の処方箋がないと入手できません。大臣が何をのんだのか知りませんし、マスコミは、昼食時にお酒を飲んだことばかりを責め立てているようですが、風邪薬の方が、よほど悪影響を及ぼした可能性があります。抗ヒスタミン薬がとても眠くなるというのは、市販されている睡眠改善薬、つまり『処方箋の不要な睡眠薬』が、全て「抗ヒスタミン薬」であることを知れば、誰でも理解できることですが、意外に知られていません。そういう科学的な知識を広める、格好の材料になるはずですから、そんな報道もして欲しいですね。

次にアルコールについてですが、アルコールが眠気を催すのは確かです。ただ、アルコールの飲み過ぎは、実は不眠症の原因になります。アルコールは飲んだ直後は眠気を催す作用が強く出るので眠れますが、体内で分解されると目を覚ます方向に働きますので、睡眠は障害されて、睡眠不足が貯まります。その日の昼に飲んだことよりも、普段から毎日のように飲んでいることの方が、眠気の原因になった可能性もあります。またアルコール依存症の初期から出現する症状も不眠症です。そして、これは非常に重要なことです。というのも、飲酒が多い=>不眠=>眠れないからお酒の量が増える=>ますます不眠で依存症が悪化、という悪循環に簡単に陥るからです。眠れないときには、お酒に頼るよりも、処方箋が必要なので面倒ですが、睡眠薬の方がましだと言われる所以です。ちなみに、上述のように市販されている睡眠改善薬は、「抗ヒスタミン薬」で、あまりお勧めではありません。

最後に時差ボケについてですが、日本人は、時差ボケなど、「精神力で頑張れば乗り切れる」という精神論に走りがちですが、少なくとも、欧米では外交時に時差ボケ対策をきちんと考えているはずです。出典は忘れましたが、アメリカでは過去に時差ボケのために外交団が交渉に失敗したことが、時差ボケに対して科学的に対処するきっかけになったと読んだことがあります。ヒラリー・クリントンがアメリカから日本により、さらに西の国に行くのは、その意味もあるかも?個人のがんばりを責めるだけではなく、そんな視点も持って欲しいと思いますし、是非、今回の中川大臣の失敗を、今後に科学的に建設的に役立てて欲しいです。

私は、あまりTVを見ないのですが、今回は偶然、記者会見の様子をニュースで見て、気の毒に思いました。特にかばいたいという気持ちはないのですが、中川大臣は、自分自身が話している時に、あれだけ意識が朦朧としてしまうとは思っていなかったでしょうし、朦朧としているわけですから、会見を中断して目を覚ましに行くという選択肢も思いつかなかったのだろうと思います。あの状況では、本人以上に同行している記者団の方が、指摘してあげなかったことの方が、よほど気になりました。大臣が外国でミスをするのは、基本的には日本人全員にとって損なことのはずですから。

私自身も、学生時代から居眠りがひどくて、多くの方に失礼もしたし、自分でも自分が嫌になることが多々ありました(だから、睡眠障害の専門家になったという話もあるくらいで・・・)。寝不足が続くと、本当に大事な時でも、驚くほど眠くなります。日本は、もともと居眠りが多い社会ですし(通勤電車を見ればわかりますね)、今回の騒動が、睡眠の重要性を、国民が認識してくれるきっかけになると良いなと思います。

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