●うつ病と不眠症状
うつ病は、非定型的に過眠症状が出るものもありますが、ほとんどの場合、不眠症状が前面に出る病気です。そして、気分の落ち込みなどの症状が治った後にも、不眠症状が残ることがあり、よく相談を頂きます。
「うつからの脱出」(下園壮太著)によると、うつ病は、発症期-底期-回復期-リハビリ期の4段階があるとされますが、睡眠(不眠症)の観点からは、うつ病の「病期」が重要です。
発症期から回復期にかけては、まず休息が最重要です。抗うつ薬・睡眠薬も充分使って、しっかり休むようにします。この時期を乗り切ると、リハビリ期に入ります。この時期は、普通は1年程度、長いともっと時間がかかります。発症から底期にかけては、入院を必要とすることもありますし、仕事も休まざるを得ないことがほとんどです。ですから、この時期はかえって問題にはなりません。自分ではどうしようもないので、あきらめて治療に専念できます。しかし、この後、少しずつ元気が回復して、気分も上昇傾向になるリハビリ期が、かえって問題になります。長期に休職することも難しく、ストレスもかかり始めますが、体調はまだ完全ではないので、疲れやすく、眠りも悪く、焦りも出てきます。特に、この時期になると、「疲れているのに眠れない」「うつ病は治ったはずなのに眠れない」と言われることが多いです。
しかし、上に書いたように1年以上にわたって、体調は完全にはなりません。実際、それまで、遅い時間まで残業していた人が、一度休職した後に復職するときには、家にも早く帰り、早くベッドにも入ってしまいます。スポーツをするような元気もなかったりします。そうすると、今度は、日中の活動不足で眠気が貯まらないため、ぐっすり眠れません。また、うつ病の時によく使われる精神安定剤や睡眠薬は、浅い睡眠を増やす作用は強いのですが、深い睡眠はかえって減らしてしまうことも多いですし、長く効くタイプでは、翌日まで持ち越すことで、日中にだるさや疲れが残ったりします。ですから、この時期になったら、回復期までとは異なり、「睡眠を沢山とる」ことを目標にして睡眠薬を増やすと、かえってよくないこともあります。
以上のように、同じ、うつ病と言っても時期により、睡眠の取り方や、睡眠薬の使い方が異なることは、是非、理解しておいた方が良いでしょう。
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コメント
半年以上前から不眠が酷くなり薬があっても短時間しか寝れません
仕事しながらの生活なので正直辛いです
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それは、大変ですね。お困りでしたら、睡眠障害相談室の方から、直接、ご相談下さい。
投稿: ゆうちゃん | 2011年9月 9日 (金) 21時18分
心療内科で睡眠導入剤を処方してもらっていますが、睡眠後短時間で覚醒してしまいます。
連日のように慢性的な睡眠不足状態のため、日中の業務に支障が生じています。
特にストレスを感じているわけでもなく、鬱病などの精神疾患の自覚症状は無いが、主治医の見解は鬱病の派生的な症状から身体のリズムが矯正できていないものといわれています。
睡眠導入剤の服用はこれからも主治医の指示にしたがうつもりだが、日常的に回復に結びつく治療方法があれば、実践していきたいと考えている。それについてご教示を願いたい。
>オーナーより
相談は、睡眠障害相談室の相談コーナーから受け付けています。一般的には、薬の治療以外に、認知行動療法が有効です。平たく言うと、睡眠について勉強して、生活習慣を改善する治療です。
投稿: ジゲン | 2012年6月 3日 (日) 05時12分