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紛争解決学からみる3.11 ―東日本大震災からこれまで、今、そして未来への視点―

今日は昨年の震災から1年です。2時46分に家族3人で黙祷をしました。
さて、昨日、3月10日に、熊本大学で表記のシンポジウムが開かれました。
こちらがパンフレットのPDFファイルです→ 2nd-Conflict-Resolution-Day.pdf

あまり広報されていなかったので、少人数でしたが、いろいろと勉強になりました。

紛争解決学(conflict resolution)というのは耳慣れない言葉かもしれません。それもそのはず、この名前の講座は、今のところ熊本大学にしかありません。ぼくは、この講座が属する文系の大学院である社会文化科学研究科の講義も担当していますし、准教授の石原明子先生とも親しくしていて、2年前にも一緒にシンポをしました。石原さんは、もう1年以上アメリカで研究していますが、福島にフィールドを持っていたため、震災後、何度も福島を訪れたそうです。その経験も含めて、「紛争解決学」という専門領域から見た、福島の問題を話してくれました。具体的な話もいろいろありましたが、総論的なまとめとして、以下の点があげられます。

1.環境が破壊されるような災害が起きた時には、種々のレベルのコンフリクトが起きること。
  →人間関係が崩壊する、住民全員がストレスを受けた状態で、余裕のある人がいなくなる。
2.これらのレベルの異なる紛争は、実はより大きなフレームでの紛争の縮図になっていること。
  →ステークホルダー分析を行うと、縦横に異なるフレームが見えてくる
3.福島の現状は、水俣病が水俣地域に引き起こした問題と一緒であること。

1.2.については外部から福島に対して何かしたいと考えている人の善意同士がぶつかって、その影響が、例えば、被災地の家族内での意見の相違につながり、マイナスに働くことがあるという意味で、非常に考えさせられました。簡単に説明すれば、例えば、政治のレベルでアメリカと日本、政府(与党)と野党、官と民という意見対立がある。放射線の影響についても、学問レベルで意見対立がある。それが、被災地の夫婦の間で、夫は政府の発表を信じているが、妻は別のソースからの情報を信じて、ただでさえも、被害にあって悪い状態なのに、さらに家族内の関係が悪化してしまうことにつながる、ということです。石原さんは、水俣への思い入れも強いので、福島の状況が、水俣の地域にもたらしたものと、とても似ている3.の点も強く指摘していました。実際、今でも水俣地域で住民同士の間に、いろいろなわだかまりがあると聞きますし、水俣の歴史を考えると、そうなるだろうと思います。彼女が被災地に行って、自分は紛争解決学を専門としていると話すと、今、必要なのは、そういう人なんだと歓迎されて、上に書いた夫婦間の危機、学校でのいじめ問題、地域の中での意見相違の解決のしかたなど、種々のレベルでのコンフリクトを相談されるそうです。

なお、このようなコンフリクトの原因として、彼女は以下の4点を指摘していました。
1.福島の場合には、人災の面があり、単なる天災と異なること。つまり、同じ死亡でも、病死<事故死<殺人の順に紛争を生じる影響力が大きくなる
2.社会制度面では、そもそも法制度そのものが敵対的プロセス(裁判)を使用している
3.環境というのは、生きていく上で、最も基盤となる(マズローのいう一番低レベルのニーズ)ことから、それが脅かされた時の反動も大きい
4.限界状況に置かれることで世界観・価値観の相違が浮き彫りになること。余裕がある状況なら、全員を助けられるが、10人中9人しか助けられなければ、誰を助けるのか意見の違いが鮮明化する。

では、どのようにするべきかという点で、廣水乃生(ひろみずのりお)さんの話も勉強になりました。彼は、学校の教員を経験した後、プロセス心理学(ミンデル)を学び、今は、以下の研究所の代表をされています。福島の問題に限らず、コンフリクトが存在する集団で、コミュニケーションを促進することで(この説明は不十分ですが)、希望へつなげるのが、プロセス心理学のワークで、彼が、それを応用した事例の紹介がありました。

廣水乃生さんのコミュニティファシリテーション研究所のHP
http://comfaci.com

プロセス心理学については、ミンデルの「紛争の心理学―融合の炎のワーク」を読んで頂くと良いかと思います。この中で、ミンデルは紛争をポジティブにとらえて、「紛争の炎は、希望の炎に変えうること」を記載しています。

なお、この二人はアメリカと茨城から、スカイプで講演ということで、熊本のような地方でも、先端の話が聞けるのはありがたい時代です。

他にも、上島さんの瓦礫の広域処理についての話は、なかなか面白かったです。全く、フォローしていない話題なので判断はできませんが、彼女の紹介にあった田中康夫さんの意見なども読むと、「広域処理=善」、「放射性物質が危険だという誤解のもとに住民運動で拒否されている」という、単純なとらえ方には、問題があるのかもしれません。

ミンデル的に考えれば、紛争もポジティブに変えていければ、復興への原動力にもなりえると思います。1年経った今、被災地の人の幸せを願います。

<追記:本筋から離れますが、瓦礫について補足>
1.以下のブログには、別の視点があります。
 震災がれきQ&Aその2河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり
2.基本知識としてこちらの資料を教えてもらいました。
 東日本大震災の際の津波被害によって発生したがれき量

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