震災支援:放射線被害、わかりやすい情報を求む!
私信で、いろいろな資料を頂きました。東大の中川先生のグループに作って頂いたものを、とりあえず使用してもらいました。また、イラスト版も頂いております。当面のニーズには足りたようですので、お礼を申し上げます。また、まとめて、ご紹介もしたいと思います。
奈良県医療政策部の武末文男さんからの依頼を転載します。
「爺、婆でもよくわかる」と書いてありますが、小学生にもきちんと説明できる言葉が必要とされていると思います。
彼は、もともと外科医としてキャリアを積んだ後、厚労省に医系技官として就職し、奈良県に出向中ですが、現在は、南相馬市に入っています。メーリングリストへの悲痛な呼びかけです。
既に、たくさんの情報はネット上にあり、チーム中川のHPなどに、基礎的なことは、わかりやすく書いてあります。でも、「A4横、10枚程度に(比較的大き目の字で)まとめて、避難所等に掲示ができるよう」わかりやすく書いたものなどあれば、このブログへのコメント、または、私あてでも構いませんので、情報を下さい。とりあえず、私が書いた返事は文末ですが、間違っていたら、コメントをお願いします。
あとは、これらを理解して、実際に現場で伝えるインタプリターも必要ですね。
タイトル:【求む!】 爺、婆でもよくわかる放射線のリスク
福島県や相馬市の保健師さんから
■ ご高齢の方々を対象として、
「福島原発の周辺地域の影響」について、説明して欲しいとの依頼を受けており、今、パソコンに向かっています。
■ 主目的のポイントは、
1.普通の人がわかりやすいこと
2.被曝のリスクを正確に理解できること
3.過剰な不安を解消できること
4.安心して子育てができること
5.紙で、A4横、10枚程度にまとめて
避難所等に掲示ができること
○ 経緯
環境放射線量などの【大量のデータ】は、提供されております。具体的に、福島県内では、ラジオは、本日の天気予報で、気温とともに【本日の放射線量】が流れています。また、避難所の掲示板には、地域の環境放射線量が、毎日手書きで張り出されています。
しかし、それをみても、下記の疑問に対して、解説がなく不安は解消されません。
(当面のリスク回避)
1.それらがどのような意味を持つのか
2.どのようになれば、気をつけなければならないのか
(中長期の放射線に対する懸念)
3.今後の農業、水産業に影響があるのか
4.あるとすれば、どの程度か
5.子どもを生みたいが、大丈夫か
福島県相馬市では、地震による被害、津波による被害、それらは、体験的恐怖として、心身に深いキズをつけています。
それに加えて、原発事故による放射線の懸念が最大の課題になりつつあります。
それらは、支援が入ってこないという問題
じわじわと病気になるのではないかという懸念
■相馬市で最も自慢の魚、漁業が、今後、水俣の公害のようになってしまい、地震の健康被害、障害者の発生、がんの発生、奇形児の誕生など、多くの素朴な疑問に、答えてくれない。
最も長い不安が、ただでさえ、残り少ない気力に、とどめを刺している様に感じます。
たとえば、
帰宅中、車とともに津波に流された89才の方は、たまたま、車が何かに引っかかったため、海に流れ出ることを免れて、一命を取りとめました。
自身の体験を震えながら語りつつも、盛んに、「このような思いを、二度と子ども達にさせてはならない」と繰り返し、くりかえし、自身に言い聞かせるように話されます。
二度とこのような思いをさせてはならない、と多くの方が、共通の認識として考えています。
しかし、そのような思いを打ち砕いているのが、放射線の問題です。自分たちの故郷はもう不毛の地になってしまうのではないか。そのような不安が、テレビでなんども流されています。
「最良と最悪」と、両論併記をされても、地震と津波でダメージを追った人達に、「最良」の幸運がくるとは考えられず、「最悪」の事態が起こると受け止めてしまうようです。
「この世の地獄」を見てきた人に、そのようなステレオタイプの情報を発信したら、良いように考えられるほど、心の力は回復してきていません。恐怖がよみがえるようです。
平静を保っていても、多くの人が、引きつった顔をしています。強いストレスにさらされている人、独特の顔貌です。
「津波のことや地震のことは、自分たちが身を持ってた意見し、十分にわかっている。」それだけでも、つらい。
「でも、頑張ろうと思っても、放射能 注)で故郷の”自慢の”魚や野菜が、もうだめになってしまったようだ。家を、地域、工場を再建しても意味がない。それなら、故郷を捨てて、どこかに行こうか。。。。」
武末注) 「放射能」という物は存在しませんよね。
あるのは、放射性物質と放射線のふたつ?
放射能という、気化して空気に紛れ込み、皮膚についたらそこから体に侵入して、がんや奇形児がたくさん生まれるようになり、子ども生まれなくなり、福島は不毛の地になってしまう。
そんな思いが、住民の間でささやかれています。
データは、あふれているのに、情報がない。
福島の現状はそのような感じです。
テレビは、たまに「正しい放射線の知識」を放送しますが、その前に、かならず、まず、住民を恐怖に陥れる「原発の報道」が長時間されます。それを見た後に、なにを言われても、良い方には受け止められないようです。
避難所の担当の方は、県のスポーツ振興関係部局の職員方でした。
避難所全般で、二時間おきに目が覚めて、不眠を訴える人が増えているそうです。そこで、「こどもを外で遊ばせたら、、」といったら、「被曝をすることを、特に子どものお母さんが心配して、外では遊ばせません。」とのこと。
雨が降らない限り、そこまで心配はないよ、、、話していると、「スタッフ」が、どんどん集まってきて、質問のエンドレスとなりました。「役所の職員などスタッフは新聞やテレビを見る暇がないようです。」ただ、送られてくる放射線の環境濃度などの情報を、避難所の掲示板に書き写す作業をしているだけで、これがどういうことなのか、一度説明して欲しい、県立医大に依頼すると派遣をしてくれるというけれど、できるだけ早く知りたいとのことでした。
できるだけ早く、放射線に関する正確な”知識”と、個々の不安(こどもを生んでも良いのだろうかとか、、、)に対するアドバイスを提供しないと、気持ちが折れてしまいそうです。
福島にとっては、地震と津波は「過去のこと」。
今後迫りくる、「危険な被曝のリスク」をいかにして防ぐかが、当面の課題であり、それらを正確に、わかりやすく、説明する必要があります。
相馬市の保健師さんは、当直あけてもそのまま、出てきて働いておられるようで、南相馬市の保健所のスタッフは、沈みゆく船に乗っている船員達の決死の活動が行われていました。
テレビで、チャリティーをやりながら、キャーキャー言っている映像とは、距離を感じます。
■「テレビで画面を見ても、どうせ、”怖いわね”と言って、一瞬箸をとめて、すぐに夕食をまた食べ始める(ルワンダの涙)」
■すべては愛のために
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3157
「裕福なイギリス人と結婚した美しい人妻、サラ(アンジェリーナ・ジョリー)はある日、義父の慈善活動の功績を讃える盛大なパーティに参加する。しかし痩せ細った少年を引き連れて突如乱入してきた一人の青年医師、ニック(クライヴ・オーウェン)によって一転する。壇上にあがったニックに冷ややかな視線を浴びせる参加者たち。それを軽蔑の眼差しで見つめ返すニックは "世界には今、この瞬間も死んでいく子供たちがいる"
と語り始める。そしてエチオピアでは飢えと病気が原因で毎日40人以上が命を落としていくという悲惨な現実を必死に訴えかける。サラの脳裏にはいつまでもその悲痛な叫びが焼きついていた。翌朝、少年が死亡したこと伝える衝撃的なニュースに強いショックを受けた。」(愛は国境を越えて)
(追伸)
福島県相馬市の保健支援のため、4/1より福島入りをしております。
原発事故に伴う風評被害で、本来であれば、危険のない群馬県からの支援がなかなか進まない中、福島県から奈良県が緊急の要請を受けたからであります。
そのため、累計個人放射線量計を持ち込み、当該地域における支援活動の、被曝量の一例を定量的に示して、できるだけ、福島県、特に相馬市近郊の風評被害の解消に資すればとも思っています。
ちなみに、2日間の支援活動を終えた時点で、二日間の累計は、「7マイクロシーベルト」で、当然のことながら、環境放射線量などから健康被害は全く及ばない微量な物に過ぎません。
それでは、ご用件のみ失礼いたします。今日(4月3日)の朝、相馬は零下一度になるそうです。まだ、雪も残っています。
汚染された、この「汚して」、「染める」と言う言葉は、本当はひどい誤解を生じているのではないかと思います。
痴呆、らい病などと同様に、放射”能”汚染などという、おどろおどろしい、まがまがしい情報の垂れ流しを、早く止めて欲しいです。
武末@福島県相馬市
____
(以下、追伸メール2通も転載します)
タイトル:半径30-40kmは、静かなヒステリー状態
20km圏内の避難地域への立入禁止について
平成23年3月30日
福島県災害対策本部
20km圏内の避難地域には、決して立ち入らないでください。
あなた自身が「汚染」されるリスクがあるだけでなく、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小さなお子さんを含め、「避難所全体に汚染????」
が拡大するリスクがあります。
(後略)
◆
放射性人間、いや、放射能人間といった、化け物があたかもいるように感じているようです。現地に入ってわかったことですが、極限の住民のストレス、不安、それを原発報道が、煽り、追い詰められ、その結果としての行動のようです。
30km圏で、屋内待避をしている方や施設が、10km圏内に立ち入った人達に対して、立入を拒否している。
そのような、世紀末のような状況が、目の前に現実に実現していました。まるで、映画の中に迷い込んだようです。
たけすえ
____
タイトル: Show the flag!! south Soma
You have to be south Soma & Soma.
相馬に、物はあふれています。人がいない。特に、専門職という偉い人達。みんな、他に行っちゃった。
今後のスタンスを、はっきりさせてくれぇー
good night Takesue
____
武末さん、お疲れさま。
ぼくも、そこが現在のグラウンド・ゼロに違いないと思っていました。武末さんが、そこに入ってくれていることに、感激しています。われわれのように外側にいる人間が話す言葉は、当事者の心にはなかなか届かないです。1ミリシーベルトには、何の影響もないとか、タバコ一本と同じだとか、理性的な説明は、いくらでもできても、横にいて、「そんなこと言われたって、心配だよね。」と一緒に心配したり、一緒に怒ったりしている人の言葉だから、届くものがあると思います。頑張って下さい。
以下の説明には、「政治的には」問題がある部分がありますが、ぼくが当事者なら、このように理解して行動するというものです。
(当面のリスク回避)
1.それらがどのような意味を持つのか
屋内退避が指示された時から、既に相馬市近辺での放射性物質濃度は、かなり下がってきています。日中に外出することは問題ないと思います。(どなたかが計算してくれてましたので、見つけたら追記します)。お子さんが、日中に外で遊ぶことにも問題はありません。ただ、例えば、雨で流れたものが水溜りなどに集積している部分もあるでしょうから、手洗いは、いつもよりしっかりしましょう。泥遊びをするのは、まだ寒いですし、風邪も引くからやめましょう。
たとえば、土壌の放射線量は、最高点だと北側30kmでも、710Bq/g(=710,000Bq/kg)あります(昨日の資料はこちら)。これは、もちろんとても高い値です。が、万一、手についた泥が何グラムか口に入ったからと言って、心配が必要な量ではありません。
2.どのようになれば、気をつけなければならないのか
原発からの放射性物質の排出は、幸か不幸か、ほとんど海に流れているようです。とりあえず、今より急に悪くなる危険性は少なそうですが、行動指針は下記が参考になりますね。これは掲示されていますか?
→放射能漏れに対する個人対策 by 山内正敏さん
http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html
(中長期の放射線に対する懸念)
3.今後の農業、水産業に影響があるのか
4.あるとすれば、どの程度か
影響があるのは、間違いないでしょう。これは、現時点では予測が難しいですし、ここは政治家の責任もあります。また、津波の塩害でも稲作が大きな影響を受けたようですね。
5.子どもを生みたいが、大丈夫か
現在、妊娠中の方、将来の妊娠を希望をされる方、どちらも問題はありません。ただし、その地域ですと、事故直後の放射線濃度が高い時期に、間違って原発のそばに入ってしまって、お悩みの方もいらっしゃると思います。その場合でも、問題が起きる可能性はほとんどないと考えて良いのですが、早めに一度、甲状腺の被曝チェックをされておけば、ご本人の安心のためになると思います。というか、もう既に、その程度は、その地域でされていないのでしょうか?普通のガイガーカウンターで、甲状腺のチェックは簡単にできますので。
間違いがあるかもしれませんが、取り急ぎ。
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Comments
粂先生のブログが各所で紹介されているようで、お客様が増えていますね。
チーム中川のブログは科学者の私にも一般人にも分かりやすいと思うのですが、お年寄りや子供でも理解出来るような書き方ということでしょうか?
私は放射線を太陽光による日焼け、放射性物質をタバコの煙・光化学スモッグ・煤塵・酸性雨などに例えると分かりやすいかなと考えました。
===こんな文章が必要?===
放射線は太陽光のようには目には見えませんが光線の一種です(ざっくりまとめすぎか?)。
太陽光も強すぎると日焼けをするし、皮膚癌の原因になります。しかしどちらも日が照っている(放射能が放出されている)時間しか影響を受けません。
また、現時点では強い太陽光に相当するような放射線は原発からは観測されていません。
現時点で問題となっているのは、放射線を出す放射性物質が原発から放出された件ですが、これらは
1)環境からの外部被曝:地面に降り積もって放射線を出す
2)皮膚からの外部被曝:皮膚に付いて放射線を出す
3)内部被曝:体に取り込まれて体の中から放射線を出す
という3つの経路で健康被害を起こします。
2)は光化学スモッグ、3)はタバコと同じように考えると分かりやすいです。
例えば光化学スモッグは目の粘膜に付着すると炎症を引き起こしますが、洗い流すことが出来ます。
タバコは日常的に吸い続けると有害物質は肺に残留して癌の原因になりますが、たまに煙を吸う程度なら代謝によって有害物質が排出されます。
政府は1)環境からの外部被曝の影響を調べるために大気に浮遊している放射性物質や土壌に降り積もった放射性物質を測定して「地域の環境放射線量」としてお知らせしています。雨が降った時に外に出ないように言われるのは、大気中の放射性物質がどの程度地面に積もるのかを測定して皆さんに安全性についてお知らせするためです。
3)内部被曝については、放射性物質は種類によって体内への取り込みやすさや残りやすさが異なるので(ここら辺はお年寄りには分かりにくいですよね)、体内に取り込まれやすいことが報告されているヨードやセシウムについて国際的な安全基準に照らし合わせて報告しています。
土壌や大気の放射性物質が少ないうちは2)皮膚からの外部被曝を心配する必要はありません。
===ここまで===
「普通の人がわかりやすいこと」というのはこういう基本知識を説明するような文章が必要ということでしょうか?
でも書いてみるとそんなに分かりやすくないですね・・
「安全なのか」「危険がいつまで続くのか」という結論を先に出すような話なら粂先生のお返事の方が役に立つと思います。
ただ判断の根拠を理解する上では基本知識が必要ですよね。
私が書いたような事は被災地の人々はもう十分知っているかも知れないので、あまりお役に立てないようにも思うのですが、お年寄りには今まで経験しているものに例えると分かりやすいかな?と考えて書いてみました。
→お忙しい中、ありがとうございました。日光との比較は、わかりやすいし、「安心感」ができて良さそうですね。難しい言葉を一切使わない説明が欲しい(幼稚園・小学生向けという方が適切でした)とのことなので、喜ばれると思います。早速、転送させてもらいました。
Posted by: bloom | 2011.04.04 02:16 AM
今日読み返してみてもあまり役に立たないかな?と感じたので、転送恐縮です。
もし私でも出来ることがあれば、何なりとお申し付け下さい。昨日の文案も現地のお年寄りや子供達と直接お話して書き直せれば良いのですが・・
放射性物質が直接見える色眼鏡みたいなものがあると便利ですね。
地面を見たら昨日はうすらぼんやり光っていたけど、今日は全く光って見えない、じゃあ今日から畑を耕そうか・・みたいな判断が出来ると良いのですが、見えないから怖いのだと思います。
でも見えなくても味がしなくても重大な影響を持つ化学物質もあって、全てを個人で測定するのは無理なので、モニタリングする人を信頼するしかないし、信頼出来るシステムを検討するのが良いと考えています。
Posted by: bloom | 2011.04.04 06:07 PM
応用物理学会の放射線分科会から出ている説明文が、学会から出ているのにとてもわかりやすい(失礼!)と思い、ここに書かせていただきます。
http://annex.jsap.or.jp/radiation/20110317.html
お子さんには難しいかもしれませんが、普段科学に興味をお持ちでない方でも、すっと読んでいただけるのではないかと思いました。
このコメントが、的外れ/もしくは既にタイミングを逸していた場合は、どうかご容赦いただけますよう。宜しくお願いします。
Posted by: ozy | 2011.04.04 10:28 PM
全てには応えていないでしょうが、こういうのはどうでしょうか?
http://d.hatena.ne.jp/kasoken/20110406/p1
Posted by: | 2011.04.06 10:20 PM