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震災支援:福島第一原発の危険性(追記いろいろ)

地震から一週間経ち、本来は急性期を過ぎ、回復期から復興期への移行を進める時期なのに、今回は原発の事故の収拾がまだで、東日本全体が浮き足立っているように見えます。そこで、昨日、物理学者たちが頑張って翻訳してくれたアメリカ人の科学者による事故の解説を紹介するとともに、若干の考察を加えます。(書いたら、いろいろ教えてもらえたのと、食品についての発表もあったので、追記しました)

(追記)ようやく、収束の方向が見えてきました。良かったです。また、15日、16日に中性子線が観察されたり、放射性物質の放出が最大になった理由も、吉岡メモを読むと納得できそうです。これが正しいことを祈ります。

(追記)より具体的な数値と行動計画がありました。参考になります。
放射能漏れに対する個人対策 by 山内正敏さん
http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html

ランディ田口さんのブログ
「最悪のシナリオ」という脅しに騙されないために」

牧野さんのブログ:放出量の計算、汚染量の計算など、なるほどです
http://jun-makino.sakura.ne.jp/articles/future_sc/note098.html#rdocsect103

飯田哲也さん:「最悪シナリオ」はどこまで最悪か
http://www.isep.or.jp/images/press/script110320.pdf

講演は、下記です。この内容は、一定の知識のある方向けです。知識の欲しい方向けのため、一般の方が簡単に何かを知りたくて読むのには、難しすぎるのでお勧めではありません。
「福島原発の放射能を理解する」
http://bit.ly/gxBZtD

なお、このスライドの内容は、たとえば数ミリSvの被曝は大丈夫となっていて、日本の一般人の限度年間5mSvを無視しているように見えますが、規制値は安全をみて厳しく規定されているということで、実際に専門家が心配するレベルについて書いてあります。

また、翻訳した野尻先生の補足
「福島原発の放射能を理解する」の翻訳へ頂いたコメント等につきまして
http://bit.ly/fwEMsL

そして、以下が、ぼくの私見です。

今の日本の報道で欠けていると思うのは、「最悪の事態」がどの程度なのかという視点です。たとえば専門家の多くが東京の人が心配することなど全く必要が無いという意見なのに、東京からも心配の声をたくさん聞きます。ですから、想定される最悪の事態を、もっとはっきり言った方が良いのではないかと考えました。

その結論として、現在の避難範囲の20kmは妥当ですが、最悪の事態まで想定すれば、今後、この範囲はもう少し広がる危険性は一応想定すべきです。しかし、それが東京都心(220km)に及ぶことは全く考えられない。仙台(100km)も大丈夫。50km前後圏(たとえば福島・郡山)も、急に避難が必要になる可能性を想定しておく必要はない。風評被害で人が入らなくなっている、いわき市など(30~50km)については、もちろん現在は大丈夫。ただし、今後、「最悪の事態」になった時には、妊婦さんと子どもは1日以内という程度のレベルで退避する必要ができる危険性はある。しかし、その場合でも、大人は、もう少し時間をかけて、ゆっくり退避しても大丈夫だから、今、慌てる必要はない、ということだと考えます。また、単純な円で考えるのも間違っていて、地形や風向き・風の強さで、本当に必要かどうかは、場所によって異なることもわかってきています。たとえば、モニター車(注*1)のデータを見ると、同じ20km圏でも、10倍以上の放射性物質の濃度の違いが認められます。(最高地点でも、当面ははそこに住んでいても大丈夫なレベルですが)その点、いわき市のある南側は、海に広がってしまうせいか、とても低くて、今は全く安全です。
(追記)30km圏で取れた牛乳から、微量ですが放射性物質が検出されたと報告されました。予想されたことですが、早かったですね。今の量なら、直ちに授乳中の人が避難すべきということではないのですが、事態が長引けば、やはり妊婦・子どもは、この区域からも退避する必要が出てきます。今日は福島市でも10μSv/hを記録していたようです。なお、この文は「最悪の事態」について書いてありますから、健康にはっきり影響があるレベル以下の少量の被曝をすることは、ある意味ではしかたないという前提で書かれていますが、妊娠していない大人のことを書いています。
(追記)見積もりが甘いという指摘があります。放射性物質の広がりには、漏出元での1.量(濃度)、2.継続時間の要素があり、その先では、風の方向・強さ・地形の要素があります。それらの要素の全てが同時に「最悪」になれば、甘い可能性は否定しませんが、量が多くても、爆発的な短時間で済むとか、量と時間も長くても、風向きがよければ、この見積もりで大丈夫ということになります。

さて、それでは、「最悪の事態」は何かということですが、ぼくの理解は、起きる可能性としては、下記の1から4の順です。

(追記)以下は、大筋で間違いはないですが、これを書いた後、冒頭に示した、専門家も含む、より詳しい解説が出てきたので、全部、取り消します。)

1.使用済み燃料が高熱・崩落して、放射性物質が飛び散る(3号機,4号機)

→水と反応した水素が燃えたりする可能性と、「空焚き」状態でも、温度が極端に上昇すれば、上昇気流に乗って放射性物質が今より大量に撒き散らされることになります。実際、現在は、この状態の小規模なものになっているので外に漏れているわけです。これは、一応、想定すべき。これを防ごうと放水をして頑張っている。
(追記)ただし4号機には水漏れがある可能性があり、セメントで埋めざるを得ないらしい。その前に床が抜けて飛び散る可能性がある。また、3、4号以外にも、全く別のところにも、大量に使用済み燃料がある。そちらは切迫した状態ではないようですが、やはり電気系統が復旧しないと、本質的な解決にならないようです。

2.原子炉内の燃料の溶融が進んで、圧力容器・格納容器が壊れ、
  中の放射性物質に火がついて飛び散る(1~3号機)

→今は、考えなくても良さそうだし、もし起きたとしても1のひどいのと同レベルの汚染です。核燃料が飛散することになります。

3.使用済みの燃料が再臨界に→ これは、ほぼない。

4.原子炉内の燃料が再臨界に→ 理論的にはありうるが、確率は非常に低い。

以上、専門家の人からみて、間違っていたら、教えて欲しいですが、多分、大きくははずしていない理解だと思います。


それで、2については、東電の発表によれば、原子炉自身への注水は続いているので、2は起きないと期待しますが、一応、「最悪」には含めるべきでしょう。その上で書いたのが、上述のレベルです。

では3,4はどうか?まず、これは起きない方の可能性の方が高いので、そもそも想定する必要がない。また、実は、「最最悪」で起きたとしても、実際の放射性物質による被害は、上に書いたレベルと、それほど変わらないのではないかと考えます。

まず、再臨界(=核分裂が連鎖的に続く状態)が起きるためには

A.放射性物質の濃度が一定以上になる
B.周囲に水がある

が必要です。というのは、ウランから出る中性子は強すぎて、通常は隣のウランを通り過ぎてしまいます。周囲に水があると減速して、近くのウランにまた当たってしまい、次々に核分裂が連鎖してしまうのです。これが、通常の原子炉の中で起きている状態、つまり核燃料が「燃えている」状態です。ですから、今回事故を起こしたタイプの原子炉は、普段は燃料棒の回りに「水があることで燃えている」のですから、「水を抜くと消える」のです。なお、ホウ酸水を入れると、水と異なり、今度は減速しすぎて止まってしまうので連鎖しなくなります。現状で、水を入れているのは、燃料と燃料の間に制御棒という中性子を吸収するものを入れているから、水を入れても大丈夫なのです。

では、この再臨界が起きる場合としては、例えば2号炉は水がなくなり炉心が完全に露出したわけですし、その状態のままで下の水の中に落ちて(B),濃度が高まれば(A),また燃え出す可能性があります。しかし、燃料棒が解けるのは2400度で、下の水もなくなれば、臨界状態は止まりますし、炉の底は鋼鉄ですから当然溶けて(鋼鉄は1500度)、さらに下に落ちて行きます。その途中でどうなるかわかりませんが、一定規模の爆発は起きるとしても、原子炉の物理的な大きさを考えると、このような爆発に関与する燃料はごく一部で、残りの大部分が現在の状態のまま、吹き飛ばされることになります。しかし、それは、せいぜい数百メートルレベルで、周囲で作業している人に放射線被害が出る危険性は大いにありますが、20km避難していれば、充分過ぎるでしょう。確かに核燃料の総量としては広島の原爆の何百倍の量ですが、それが一気に爆発することは、ありえないわけです。(チャイナシンドロームという映画がそのような映画のようです。)
(追記)燃料棒は、実は、より低温で解けるという説があるそうです。本当なら嬉しくありません。

プールの方の使用済み燃料についても、確かに量は多いのですが、もともとかなり距離が放して置いてあって全体の面積が広いので、一箇所に集まらず面状になるから、密度が高まって再臨界する可能性が低いということだと思います。

繰り返しになりますが、一部理解が不十分な点があるかもしれませんが、結論として、今より事態が悪化しても、避難範囲が、今より極端に広くなる危険性は想定する必要はないという点は間違っていないと考えています。

たとえば1の使用済燃料が高熱になって飛び散る危険性が、一番、切迫しているわけですが、これは「核爆発」するわけではありません。また、崩落するとしたら、飛び散る時間は、一瞬です。ウランやプルトウムが、塵などに乗って飛んでいくとしても、全量がそうなるわけでもありません。やはり、普通に考えれば東京まで大量に行くことはないでしょう。

実は、今日からドイツの学会に行く予定だったので、いろいろ書くことを、ためらっていましたが、せっかく招待してもらったのですけど、直前で取りやめにしました。(ドイツのマスコミは日本以上に危機的に書いているようで、すぐ理解してくれました。この面ではマスコミさんが恐怖を煽ってくれた「おかげ」かもしれません…皮肉です!)

そこで、この文章をメーリングリストへ投稿したら、かなり反響があったので、九州の全く心配のない地域にいて、なおかつ専門外のことを書くのはどうかとも思いましたが、ここに公開します。とにかく、東京の方は、心配されないでOKです。


*1:以下に、放射線をモニターしている地点の一覧があります。
東北関東大震災・非公式・放射性物質モニタリングポストMAP
http://bit.ly/MoNiTo

下記が10分毎にリアルタイムでグラフも見られます。
http://bit.ly/h12z68

原発の周囲は、文科省がチェックしています。文科省HPから、
http://www.mext.go.jp/
トップ > その他 > 東北地方太平洋沖地震関連情報 > 放射線モニタリングの結果

今日は、だいぶ下がってきていますね!今より広い範囲で避難が必要にならないように、祈るしかないという感じです。

原発周辺でのアメダスによる風などのデータ
http://www.jma.go.jp/jp/amedas/205.html?elementCode=1


*2:
放射線の量と影響については、東大の中川先生のグループの資料などをご覧下さい。PDFファイル。
http://www.u-tokyo-rad.jp/data/twittertoudai2.pdf

*3:今日の時点での状況のまとめ。4号機が、やはり厳しい状況か。(PDFファイル)
http://bit.ly/ic7DcZ

*4:3号機の格納容器の圧力上昇→弁がダメになっている場合、今より強い放射性物質の放出が起きる。

*5:母乳・牛乳と摂取したヨウ素の関係
ヨウ素を取り込むと、一部が甲状腺に取り込まれ、残りは、ほぼその日のうちに尿に排泄、母乳や牛乳にも分泌されます。甲状腺以外の部位や血液中には、長くは残りません。(いろいろな臓器に少量は分布します)乳牛が放射性ヨウ素に一過性に汚染された牛乳を出しても、数日すれば、ほとんどなくなりますから、牛そのものの処分は通常は不要です。
ヨウ素の説明(一定の基礎知識のある方向けです)
http://bit.ly/IoDIde

*6:放射能レベルの推移アニメーション
http://ag.riken.jp/u/mon/anim.html
3月21日の午前4時前後のアニメをみると、どのように広がるか、よくわかります。

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Comments

お久しぶりです。寺田です。

日本の原子力行政が推進派の原子力委員会と安全重視の原子力安全委員会がバランスを保っていた時代はまだ健全だったのです。OECD各国にはすべては推進派と安全重視派の同様なバランス関係が存在しています。しかしながら、日本政府が石油依存型社会からの離脱と称して原子力発電をエネルギー政策の国是として推進していった頃からおかしくなったのです。
事故での報道で、最初に経産省の「原子力安全・保安院」のメンバーが会見したのを記憶していませんか?非常に要領が悪く、今回の事故は東電にあって、我々は監督官庁にすぎないという横柄な態度を取っていました。さすがに記者たちも保安院の連中が余りに事態を理解していないことに苛立っていました。

政府は、原子力安全委員会の権限を原子力安全委員会から原子力安全・保安院に移して、許認可権まで与えました。それ以降は、ほとんどお役所仕事で、原発事故が起きて住民の安全が脅かされるという観点からではなく、自分たちの保身のみ考えて、GOサインを出してきたのです。
福島原発は1967年にアメリカのGEが設計したもので、これが1号機です。2-6号機はこの設計を元に、日立を東芝が施工しました。これらの設計は、現在では、安全性から見て基本的な問題があり、40年を目処に廃炉になる予定でした。しかしながら、原子力安全・保安院は昨年の3月26日に東電側に後20年使用可能であると許可を与え、さらに昨年の11月には3号機をプルサーマルが使用できるように許可を与えているのです。3号機の炉心燃料の3分の1はMOX燃料というプルサーマルを最初から混ぜたものを使っています。本来廃炉にしなければならないものをプルサーマル使用の許可を与えたというのは常軌を逸しています。
「浜岡原発」の場所は、東海地震で想定される震源地の真上に立てられたものです。もはやここまで来ればブラックジョークと言うほかありません。想定できない東海地震が起き「浜岡原発」の事故で100万人くらいの方が亡くなれば年金問題も少しは解決できるとでも考えているのでしょうか?
日本の原子力発電は凄まじい利権の巣窟で、周辺住民の安全よりも利権を優先する形で進められて来たことが今回の大事故を招きました。日本の原子力行政のみならず、安全問題に関してまともに報道してこなかったメディアも同罪です。

>、燃料棒が解けるのは2400度で、下の水もなくなれば、臨界状態は止まりますし、

アメリカ原子力安全委員会の方の話ですが(米国ABCの報道)、GEからの情報では、表向きは2400度となっていますが、実際は600℃程度で溶けるのだそうです。従って、再臨界が起きる可能性はあると言っています。 臨海が起きないと断言していますが、本当はどうなのでしょうか?

>現在の避難範囲の20kmは妥当ですが、最悪の事態まで想定すれば、今後、この範囲はもう少し広がる危険性は一応想定すべきです。しかし、それが東京都心(220km)に及ぶことは全く考えられない。

これも甘すぎると思います。400ミリシーベルトの被爆で白血病になりますが、3月16日に発表した福島原発から20キロの地点(福島県浪江町周辺)の放射線は1時間330マイクロシーベルトで、NHKの報道で御用学者がこの程度は安全な数値だといっていますが、とんでもない!
一ヶ月住めば、330ミリシーベルトとなり、白血病のリスクは現実問題として高くなる値です。現在、非難範囲は20kmとなっていますが、同心円状で区切ることがそもそもナンセンスです。放射線であれば、意味がありますが、ミストと言って、チリに放射性物質が混ざり、チェルノブイリでは、ポーランドの300kmも離れた地域で、白血病などの重篤な健康障害ででています。風向きによって遠隔地まで飛散するので、東京が安全だなどとは言えません。幸い、現在、風向きは太平洋沖であるというのが不幸中の幸いです。

Posted by: yterada | 2011.03.19 at 06:58 PM

はじめまして。突然失礼します。
大変参考になるメモありがとうございます。
ドイツの www.dwd.de が日本の気象条件から放射性物質の拡散について東京までを含めた予報をだしているみたいです。
どれくらいの濃度の放射性物質が拡散するのかなど、ドイツ語でしか記述されていない為に、翻訳サイトで独英変換しても詳細がわからないところがあります。
どなたか、これについて簡単に解説していただけないでしょうか?
ちなみに、大学で管理区域に入る仕事はしていましたので、UCSBのMonreal氏のスライドはだいたい理解できていると思っています。

Posted by: masa | 2011.03.21 at 12:19 AM

粂先生の解説は私には分かりやすかったです。
科学的論理性はあるけれど物理屋ではない方がまとめる文章は一般人にも読みやすいかも知れませんね。

私はこういう時、専門知識のある人がどう行動するかを見ています。

筑波地区の物理屋さんに逃げる気配が無いので、私も慌てていません。

新型(豚)インフルエンザの時は恐怖をさんざん煽っている専門家がのんびり暮らしている様子が伝わってきたので「ガセだよね」と思っていました。

とりあえず、「誰が悪いか」ではなく「何が問題か」を論じるように心がけたいと考えています。

Posted by: bloom | 2011.03.21 at 01:57 AM

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