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熊谷晋一郎 vs 川口有美子 対談 YouTubeで!

実際の対談を聞かないと、何のことやらわからないと思って、完全にお蔵入りしていたメモ書きですが、なんと、DVDの公開のご許可を頂きました!また、川口さんの著書が「大宅壮一ノンフィクション賞」を受賞とのことで、お祝いのため、この拙文も公開することにしました。

この対談は、お二人の著書の出版記念に、2009年12月に東京で行われました。ぼくは遠方のため参加できませんでしたが、白石さんからDVDを送って頂きました。10分刻みなので、9本に別れていますが、以下から、数字の順番にYouTube ビデオをご覧下さい。
http://bit.ly/bR3wtS

お二人の本と感想は、
リハビリの夜」:養老孟司氏の書評
逝かない身体」:柳田邦男氏の書評

また、文字化したものをご希望の方は、5月中旬発売の医学書院「看護学雑誌」6月号をご覧下さい。あと一部ですが、こちらの医学界新聞にもあります。

以下、抜粋とも呼べないようなものですが、自分のためのメモ書きです。

熊谷:川口さんの「(ALSの母親の伝えようとする意味を)拾いまくるのに忙しい」という表現に共感した。自分の場合も、(世間的な規範的意味で)正常な動きと正常ではない動きがあるが、それらを拾うところに意味が生じる。つまり、たとえ健常ではない動きでも、それを拾ってもらえれば、意味が出る。拾われなければ、無意味になる。これはエコロジカルアプローチだ。
川口:熊谷さんの本の中心的な話題に、正常と正常ではないものを区別する=裁くようなまなざしで、まなざし、まなざされる関係(トレイナーとトレイニー)では、体が閉じてしまうというのがある。そのような中では動きを拾ってもらえない。これはALSの告知の時などに専門家が非専門家の関係も似ている。ほときつつ、拾いあう関係は、当事者・介護者が作る関係に似ている。失敗するかもしれないけれど関係を持とうとすること。非専門家のすることの意味づけ。素人であるから、決めつけない。そのため、医学的にはできないとされていることが、できることさえある。
熊谷:脳性麻痺の子を担当した時の経験:こちらが拾わなければ、何も訴えることができない。でも訴えることがないわけでは決して無い。
川口:本題の(笑)排泄の話。排泄についての羞恥心は人間の尊厳の根本。母親は大きな覚悟をして、排泄介助を友人に頼んだ。引き受けた友人も、妙な覚悟をして、母の排泄を見るのだからと、母に自分の排泄を見せたりした。
熊谷:18歳になって初めて、家族以外の介助者に排泄介護…というよりも、失禁介護をしてもらって、「ケアの社会化」ができた。それまでは、排泄だけは、家族にしか依頼できなかったので、家族の枠から出られなかった。
川口:失禁してしまったりすることを「敗北の官能」と表現しているのは、どんな官能なのか?
熊谷:目標に向かって頑張っているときは体が固くなっているが、あきらめていくときにも快感がある。失敗を楽しむ。ほっとする?みなさんも、あるのでは?
白石:失禁した瞬間、世界の見え方が変わったか?
熊谷:失禁した瞬間は恍惚感がある。自分が自分自身の身体に敗北した…敗北という形での和解。社会的な規範からは脱落する。退廃的な官能…社会規範からは逸脱しても身体とは和解して自然に戻る。この自然というのは人間ではなく大地などの自然
川口:失禁は最低・最悪の失敗だと思う(笑)。最悪を経験すれば何でもできる。母親の摘便をして、どんなケアもできるようになった。
熊谷:規範からの逸脱するところに、次の「つながり」が生まれる。そこに希望がある。即物的な関係であるかもしれない。
川口:私も駐在夫人のセレブな生活から、ALSの介護で、それまでの生活から逸脱してしまった。
熊谷:べてるの当事者研究の紹介:幻聴というのは、自分の思いどおりにならない点で他者性で、自分の便意(失禁)と似ている。それを自分の中だけで社会化できない密室の中で解決するのは苦しい。
 #(粂)こういう視点は、なかなか持てない。すごいと思う。
白石:機械と一緒に生きるのも逸脱だと思うが、ALSの呼吸器と熊谷さんの車椅子について比較できるか?
川口:車椅子が身体化するという部分は、非常に共感した。普通の人が自殺したいと言ったら、ほとんどの場合、自殺を止めるのに、ALSの人が呼吸器をはずしたいと言ったら、はずしてあげたいというのは、すごく変だ。身体の一部なんだから。
熊谷:電動車椅子はリハビリを阻害すると言われてきた。リハビリが何を目指すのか?世界を広げる技術。
話は少し変わるが、呼吸器をつける前に、お母さんが、死にたいけど死にたくないという、アンビバレントな態度を取った部分の記載は、鳥肌が立つほどリアルだった。
川口:困っている人の言葉を、そのまま受け取ってはいけない。なぜ難病の場合だけ、死にたいという言葉が、そのまま受け取られてしまうのか、そのことが疑問。
白石:自己決定と言っても、同時に二つのことが進行している。単に一つの結論が出るのではなく、ナラティブなストーリーがある。
川口:最初は、私は心から尊厳死を願っていた。母さえ死んでしまえば、夫が待っているイギリスに帰れるし(笑)。でも母が生きたいよぉというメッセージを、じわじわと伝えてくる。
熊谷:そのじわじわに迫力がある(笑)。じわじわと生きたいというメッセージ(叫び)は、こういう風に伝えられるんだということが、よくわかった。表面の言葉と、本当のメッセージの違い。
白石:それを聞いてしまったら、答えざるを得ない。拾わない人が、自己決定という言葉で済まそうとしている。
川口:拾ったら、自分が破滅してしまうから、伝わっても家族は拾えないことが多い。そこに、ドクターも加勢する。死生学と言われるが、私たちの誰も、死などは学んだことはない。経験した人はいない。
白石:お二人の共通点には受動的な生についての肯定がある。コミュニケーション!
熊谷:当事者的視点からは「おてつきをしても良いから先回りしろ」。コミュニケーションに厳密さを求める人には声をかけない。自分が自分を委ねるのは、実は根拠のない信頼に基づいている。
川口:攻めの介護。
熊谷:身体の拡張性、障害を持っていると、身体の境界があいまいになる。機械や介助者とつながらないと生きていけない。それが危うさにもつながる。ALSの場合は、介助者も身体化する。
川口:ヘルパーの適性もある。適度にわかるのが重要で、あまりにもわかりすぎるとヘルパーの方がばててしまう。そういう人は長続きしない。もちろんわからない人も困るので、「適度」が難しい。
熊谷:その意味で、自分の本の中で書いた「隙間」は、身体化の悪い面についても指していている。自分の身体と自分が距離を置いているのと同じように、介助者とも隙間が重要。
白石:隙間を使って、お互いにほどける。
川口:介助を始める前は、もっと厳しく真面目に生きてきたかも(笑)。今でも、自分をほどくのは難しい。
熊谷:自分も、実は、ほどけていないから、ほどけるのが大事という本を書いてしまったのだと思う。
川口:社会モデルとしては、障害者は、健常者と同じであることを求め、障害を認めることをある意味拒んできた。共感も拒んできた。そうではなく、お互いが存在そのものを肯定して、ゆるやかに許していく。
熊谷:障害を持った身体で生まれて生き辛いのを、私が悪いのか、社会が悪いのか、という二分法になると、どちらに転んでも辛い。社会が悪いという割り切り方は、実は、自分の身体にも厳しく当たることになる。私の身体は、「私」も支配してはいけないものになる。専門家が裁いてきた私の身体=「他者としての身体」を自分でさえも裁いてはいけない、受動的に従うしかない=私も代弁してはいけない。
川口:熊谷さん自身が医療職であるから医療批判ではないという意味で、これまでの障害者運動とは違う部分があると感じる。ALSは医療と二人三脚でやってきたので、障害者運動の中では異食。
熊谷:自分が医療をやると言った時に、障害者団体からは敵のアジトに行くのかというような反応もあった(笑)。もちろん医学の歴史にひどいことはあって、それは自分の身体をまなざされる場所で、自分にも忌避感はある。でも、医学を拒否した結果が、守るべきだった身体を壊すことなるとしたら、本末転倒と感じた。
川口:ALSの医療は、当事者の声を代弁してきた少数の医師との関係の中で成立してきた。大多数の医療者はQOLがこんなに低い患者の命を保つ「価値」はないと考えてきた。熊谷さんは、医師と障害当事者の両方に対して意見を言える立場であることが、とても貴重。

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Comments

粂先生、こちらにはテキストまで。すごい!ありがとう!
受賞してから身体がちがちなんです。この緊張ほぐしたい。タイトルへのまなざしが痛いっ。しかし、この痛みは気持ちの持ちようで治るもの。いずれは官能的に崩れていきたいです。そういえば、敗北の官能こそが自己への勝利かもね。熊谷さんに今度そう言おうっと。

Posted by: kawaguchi | 2010.04.09 at 12:18 AM

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