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糖尿病医学の進歩

私たちの研究室では、糖尿病の再生治療を目指していますが、基礎研究が中心ですし、私自身も医師としては睡眠障害が専門なので、糖尿病の臨床医学そのものは、あまり詳しくありません。という言い訳から始めますが、熊大は糖尿病の治療・研究では伝統があり、ナンバー内科以外の独立した代謝内科(荒木教授)が以前からあります。基礎系にも山縣先生がいらっしゃった関係で、今年度は阪大系の先生の講義でいろいろ勉強ができました。

まず、劇症I型糖尿病について、花房俊昭先生(関西医大)の講義で詳しく聞くことができました。これは2000年に今川先生・花房先生らが発見したもので、日本発の世界レベルの成果ですが、ラッシュな経過を取る場合には、従来は診断がつかないまま失っていたこともあるのではないかと思います。それにしても、こんなに古くて、ありふれた病気に、このようなサブタイプがあるのが、つい最近までわかっていなかったということが、ある意味では驚きですし、医師は謙虚に勉強を続けないといけないですね。

また、難波光義先生(兵庫医大)からは、インクレチンの新薬の話がありました。現在、GLP-1 の安定アナログが2種類(注射)、分解酵素の阻害剤(内服)が、ほぼ承認段階にあるようで、かなり有望なようです。一昨年、某製薬会社の方からGLP-1 の治験の話は少し聞いていたのですが、あっという間に進んだ感じです。ぼくのイメージは、作用機序から考えてSU剤と同じようなものと思っていたのですが、作用点がインスリン分泌だけではないことや、体重増加を来さないことなど良い面もあり、予想以上に効果があるようで、びっくりでした。しかし、良い面ばかり強調されているから気をつけた方が良いという話もあり、やはり未知の副作用の心配もあることから、当面はファーストラインには自分自身はしたくないとのお話でした。また、最初は、本来は大学病院などのきちんとしたPMS(市販後調査)ができるところだけで使った方が良いと考えるけれど、製薬会社の意向もあるので、そうはならないかもしれないという話など、新薬ではいつも悩ましい問題だと思います。イレッサの教訓がありますから、やはり最初は、慎重に始める方が、長い目で見ると良いのではないかとも思いました。


以下、http://mainichi.jp/life/health/yamai/diabetes/archive/news/2008/20080715ddn035070035000c.html より引用

続・糖尿病50話:第17話 注目されるインクレチン

 糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本ですが、糖尿病の程度に応じて薬物療法を必要とする場合があります。

 現在、糖尿病の薬には大きく分けて、内服薬(経口血糖降下薬)とインスリン注射の2種類があります。さらに「インクレチン」関連薬が、先行する米国に続いて日本でも発売予定であり、糖尿病専門医の間で注目されています。では、このインクレチンとはどんな薬なのでしょうか。

 糖尿病かどうかの検査法として、ブドウ糖負荷試験があります。一定量のブドウ糖に対する反応から身体の糖分処理能力の程度を調べる検査ですが、この検査の時に同じ量のブドウ糖でも、注射するよりも飲んだほうが、膵臓(すいぞう)はインスリンをより多く分泌することが知られていました。これは口から摂取したブドウ糖が消化管を刺激して、インクレチンというホルモンを分泌させるからです。このインクレチンが膵臓からのインスリン分泌を促していたのです。

 その他、長年糖尿病を患うと、インスリンを分泌する膵臓の細胞が徐々に失われていきますが、インクレチンにはインスリン分泌細胞の保護や増殖作用があるのでは、と考えられています。

 さらに、(1)食欲を抑える(2)胃腸の動きを抑えて、おなかをすきにくくする(3)肝臓や脂肪細胞でのインスリンの働きを良くする(抵抗性改善)など、さまざまな作用があることも知られてきており、インクレチンは今までの薬にはない全く新しい作用を持った糖尿病治療薬として注目されているのです。(兵庫医科大内科学糖尿病科病院助手・永井悦子、同教授・難波光義)

毎日新聞 2008年7月15日 大阪朝刊

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