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認知的エンハスメント Nature誌の記事について

ニューロエシックスの課題の中で、最も重要なことの一つが、12月11日号のNature誌で話題になっていました。全文が、誰でもPDFで読めます。また、私は記事が発表された日に、偶然アメリカにいましたが、テレビの朝のニュースでも取り上げていたので、反響も影響も大きいと思います。

Towards responsible use of cognitive-enhancing drugs by the healthy
Nature , | doi:10.1038/456702a; Published online 7 December 2008
Henry Greely, Barbara Sahakian, John Harris, Ronald C. Kessler, Michael Gazzaniga, Philip Campbell & Martha J. Farah

私たちが翻訳した本にも、書いているグリーリーやガザニガが著者になっています。要するに、現在、アメリカでは、非常に多くの子ども~学生に、ADHDの診断名でリタリンLA(日本ではコンサータ)が処方されており、それが処方を受けていない学生にも横流しされている。これは、もちろん現状では違法なんだけれど、カフェインのような物質や、薬剤以外でのエンハンスメントが許されているのに、なぜ、覚醒系の薬はダメなのか?「正常な人」による適正使用についても、前向きに考えた方が良いのではないか?という意見です。

いろいろ書きたいことはありますが、いくつか感想だけ・・・
1.彼らはリタリンの「認知的エンハンスメント効果」ばかり書いていますが、この薬は覚醒作用が強いので、夜飲めば、当然、眠れなくなります。睡眠医学者としては、その点への言及がないことが大きい問題と思います。
2.公に議論すべきだという点に異論はないですが、日本では、昨年、リタリンの不正使用が大問題になって以来、このタイプの薬の使用は非常に難しくなっているので、まだまだ遠い国の話に感じてしまいます。
3.アメリカでは大学入試が厳しくなくて、大学入学以後が厳しいので、勉強のために飲みたいという希望は、おそらく大学生以後の方が多い。でも、日本で同じことをしたら、小学生とか、下手すると、幼稚園の子さえ欲しがるでしょうから、そのあたり、状況がすごく違いそうです。
4.同様に、日本の中高生の場合、塾などを含めた「労働時間(子どもにとって学校や塾にいるべき時間のこと)」が長く、また勤労者の勤務時間も長いので、睡眠時間が非常に短いです。ですから、そのための「眠気」の対策として、これらの薬が使われる機会が圧倒的に多いでしょう。それが、良いことなのか・・・
 尊厳死の法制議論をする「暇」が政治家にあるのなら、自殺対策をもっと真剣に話し合って欲しいと思うのと同じように、認知エンハンスメントを進めるのなら、労働時間(特に子どものです)を短くする政策を話して欲しいという気もします。


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