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リタリン: 厚労省は患者中心の視点での政策を

ぼくは本業の睡眠障害診療で、ナルコレプシーの患者さんを何人も診ていますが、現場には情報が入らないまま、報道が先行して困っています。

今日の報道で、
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/11/25/20071125ddm003040057000c.html

中枢神経興奮剤・塩酸メチルフェニデートの商品名。依存性や幻覚・妄想などの副作用がある。適応症はナルコレプシー(睡眠障害)のみ。厚労省は10月26 日、適応症からうつ病を削除するとともに、処方できる医療機関などを登録制にして流通を制限することを決定。遅くとも来年1月以降は、製造・販売元のノバルティスファーマ設置の第三者委員会が承認する医療機関や医師、調剤薬局のみが処方することになる。

と、ありましたが、どのくらいの数の医師や薬局が指定されるのか、どのような方法で指定されるのか、現場には情報が入らず、ナルコレプシーや特発性過眠症でリタリンを本当に必要としている患者さんたちが、ずいぶん不安がっています。

もし、指定される医師・薬局の数がかなり少ないとなると、患者さんから見たら、ひどいやり方です。たとえば、今なら、患者さんが3ヶ月間とか地方都市に短期出張に出る時でも、その町のお医者さんに行けば、処方を受けられるわけですが、これからは、特定の町にわざわざ月に一回出向かないと行けません。また、ナルコレプシーは10代で発症することが多く、若い患者さんが多いので、辛い病気です。とても高い新薬(リタリンは1錠10円、新薬は300円)に変えたくても変えられない人もいますし、新薬が合わない患者さんもいます。

生きていくために必要な「普通の薬」をもらうために(それも、患者さんの中には何十年も飲んでいる人がいます)、こんな不自由を強いるのは、どう考えても患者不在の政策としか思えません。

医者を登録制にするなんて、医者中心の考え方はやめて、患者を登録制にすれば済むことだと思います。もちろん、プライバシーの問題を初めとして、いろいろな問題があるのはわかりますが、できないことではありません。また、依存などの問題は、これでもクリアできるはずです。ポイントは、今の時代の医療は、医者・病院中心であるべきではなく、患者中心であるべきだという点です。

あと、薬局の数を減らすなら、降圧剤などと同じく、長期処方ができるようにすべきです(今は30日が限界)。何十年も飲んでいる患者さんにとって、決して危険な薬ではありませんし、ナルコレプシーの患者さんには、リタリンは依存性がほとんどないのです。依存者や、違法行為を働く医療者が原因で、ただでさえも辛い日常生活を送っている、本来この薬を必要としている患者さんたちが、とばっちりを受けて、不便を蒙るとしたら、とんでもない話だと思います。それとも、厚労省は、患者数が少ないから、黙って我慢しろというつもりなのでしょうか?


実は、あるナルコレプシーの患者さんが、この件に関して、睡眠学会がナルコレプシーの患者さんの心配を、あまりしていないんじゃないかと考えて、こんなことを書いてました。

ぼくも、睡眠学会の会員(今年からは評議員だし・・・)なので、深刻に受け止めたいと思います。

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自分たちはきっちりした処方を守っているのに、あほな奴らの所為で
なぜここまでとばっちり食わなくちゃいけませんか?
すきでナルコになったわけじゃないです。
もちろん、病気なんかなりたくてなる人なんかいないし、もっと理不尽な
治療を強いられる別の患者さんもいるでしょうから、恵まれている方かも
しれませんが。

なんのための学会?
自分たちの威厳のため?
肝心の患者は無視ですか?
病気を見つけるまでが学会の役目ですか?
実際それで苦しんでいるのはあたしたちです。
字だけでしか症状が分からない人たちに
あの眠さが本当にどれだけ辛いのか、
どれだけナルコの人たちが実生活で辛い思いや悲しい思いをしているのか
仕事を選ばなくちゃいけないのか、
そんなんでよく高給もらってますね?

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Comments

先生、ありがとう。
ナルコレプシーの患者から見て、とてもまともな意見です。
私は17・8歳の頃から発症して現在63歳、病名が分かるまでかなりの苦労の変遷をたどりました。
今日、転院をしなければならない為、紹介してもらった睡眠クリニックに電話予約したところリタニンは出せない為との事で、初診を断られました。
ようやく事態が深刻である事を、認識しはじめている中で、先生の意見を読みました、まともな意見ありがたいです。
断ったクリニックも睡眠学会の先生です。患者の集中かも知れません。

Posted by: taniguti | 2007.12.11 at 05:10 PM

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