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高校生へのメッセージ

今月は、附属中学と、県立第二高校の生徒対象に講演をしました。どちらも全学年相手だったので、特に中学はどの程度の話をすれば良いのか、考えるのが難しかったのですが、概ね好評だったようで良かったです。若い人相手だと「のり」が良いので、話す方も楽しくなります。

第二高校では色紙に揮毫するように言われて、ぼくは文字が下手くそなので、大変困りましたが、3つの言葉を書いてきました。

まず【一期一会】、月並みな言葉ですが、いつも、どんな相手と会う時でも、その機会を大切にしたいと、ぼくは考えているので、一番、好きな言葉です。実は、最近、講演会を依頼されてもほとんど断ってしまっているのですが、相手の人数や対象によらず、毎回の講演会を全て一所懸命に準備して話しているので、引き受けられる数が少ないのです。これも、一期一会だと考えているからです。お断りした方には、大変、申し訳ありません。

次は、講演の中でも紹介しましたが【学んだことの証しは、ただ一つで、何かが変わることである】という教育学者の林竹二先生の言葉です。ぼくは灰谷健次郎さんの大ファンなので、この言葉を、灰谷さんと林先生の対談の中で読みました。もっと短く【学んだことの唯一の証しは、変わることだ】と覚えています。もともとは教育をする側から見た言葉ですが、ぼく自身は自分の人生は毎日死ぬまでが勉強・学習だと考えているので、この言葉を聞いてから、自分の間違いを正すことが怖くなくなりました。人間は間違いをすることを怖がるし、自分の間違いを指摘された場合には、なかなか素直に認められないものです。でも間違いを認めて自分の考えを変えることは、自分が何かを学んだ証拠であるわけで、確実に自分自身が向上したと考えられます。同じ意味で好きな言葉に、孔子の「朝聞道、夕死可矣」(子曰く、朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり)があります。本来は、道を悟ったら、もうそれで人生の目的を達したのだから、その日に死んでも良いのだという意味でしょうが、ぼくはこれを、「朝に学んで夕方に死んだとしても、その日の朝に学んだことには意味がある」、というように少し異なる解釈をしています。人生は死ぬまで勉強です。この「勉強」というのは、考え続けるという意味で、考え続けるのをやめたら人生に意味がないと思います。

最後に【Vita brevis, ars longa, memento mori.】と書きました。医聖と呼ばれるヒポクラテスの言葉、「人生は短く、医術(芸術)は長し」と、「死を想え(死を忘れるな)」という二つのラテン語の言葉をぼくがくっつけたものです。ヒポクラテスの言葉は、Vita brevis, ars vero longa; sed occasio momentosa, empirica periclitatio periculosa, indicium difficile. と続きます。人生は短いのに、医師として身につける技術には果てがない。好機は短く、試してみることは危険だし、判断も難しい、という意味です。メメント・モリは、人間はいつか死ぬということを忘れないことで、今生きている時間を素晴らしいと感じ、大切にも思えるというように解釈しています。

講演の最初に紹介した「真善美」という言葉を書こうかと考えましたが、この3つの言葉を、小学生のような字ですが、心を込めて書いてきました。ぼくの講演を聞いた子どもたちが、少しでも変わってくれたら嬉しいと思います。

なお、この講演で使ったスライド資料は、下記にあります。ご興味のある方は御覧下さい。

http://k-net.org/

あと、講演に関して、全部の質問に答える時間がなかったのですが、後からもらった質問に関して・・・

1.深海のような光のない世界に生きる生物の体内時計はどうなっているのですか?

 あまり、よく知りません。すいません。体内時計はあると思いますが、体内時計は何かの変化で「同調」させる必要があるので、24時間周期での環境変化があまり大きくない場所では、同じ種類の動物同士が、うまく体内時計を同調できなくなります。それに環境の変化が少なければ、体内時計を使う必要性が少なくなります。ですから、体内時計はあまり使われていないのだと思います。ただし、たとえば光は来なくても、温度が24時間周期で変化すれば、それに合わせてリズムを作り出すことは可能です。また海の動物にとっては24時間の太陽のリズムよりも、潮の満ち引きのリズムの方が重要なことが多く、サーカタイダル(circatidal)リズムを持っているものが多いそうです。このリズムは、太陽ではなくて、月に影響されることになります。大潮の時に産卵するようなリズムを持っている魚なども知られています。
=>この点については、早速のコメントもらいました。ありがとうございました。また勉強する機会があれば、書き足します。

2.不眠のハエの寿命は?
 これは、ぼくの本の中に、寿命が短くなっていると書いたのですが、よく調べてみると、実は結構複雑なようです。不眠のハエは、完全に眠らないわけではなくて、普通のハエの3分の1か4分の1の時間は眠ります。このくらい眠れば、寿命には影響がないようです。でも、もっとねむらなくなって、10分の1くらいになると、どうやら寿命が短くなるようです。このあたりは、現在、研究を続けているところです。
 それから、講演で「不眠のハエを見つけた」という表現をしたので、不眠のハエは一匹しかいないと思われることがあるようですが、ぼくたちが研究するのは、ほとんどの場合、「ハエの一種、またはハエの家族」のようなものを対象にします。ですから、不眠のハエというのは、ある一種類のハエの家族で、親も子もその全員が不眠ですから、ハエの寿命が2ヶ月くらいで、どんどん死んでしまっても、次の世代も不眠ですから、研究を続けることができるわけです。少し、説明不足でした。

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Comments

いつも楽しく拝読させていただいております。
深海の話は非常に興味深く、個人的には、光のない世界ではあるけれども、目に見えない光(いわゆる紫外線や赤外線)は届いており、それを感知しているのでは、と勝手に思っていました。
十分な回答とは言えないと思いますが、そういうことを研究している方々がいることをWkipediaで知りました。ご参考までに、アドレスをコピペしておきます。
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/maritec/rvod/blue_earth/2007/yokou/PS37.PDF

Posted by: 虎右衛門 | 2007.06.30 at 11:38 AM

久々にお邪魔しました。胸を打つエントリの数々、さすが粂先生です!

3つのお言葉、いずれも先生との時間の中で何らかの形で耳にしたことがあるような気がします。でも、こうして改めて文字にして頂くとまた感慨もひとしお。ひとつひとつ、心にずっしり響きました。

中井先生や高塚先生のご本も読んでみたいです〜!あ、もちろん先生の新著も!(^^)今度マンハッタンに行く時にでも探してみますね!

Posted by: 教え子Y | 2007.08.30 at 09:38 AM

Yさん、コメントありがとう。お元気そうで何よりです。
「善」そのものを信じきれていないのに、人前で、「倫理」の話をするのは、ためらわれたのですが、年を取ると、羞恥心がなくなるのでしょうかねえ・・・
ただ、子ども達には、いろいろな価値観を伝えたいと思い、必ず研究以外の余談にも時間を割いています。
今回は優秀な1300人の高校生相手だったので、緊張しましたけど、楽しかったです。

Posted by: オーナー | 2007.09.09 at 01:53 PM

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