森岡正博さんのメッセージ
「無痛文明論」以来、とても気になっているのが、大阪府立大学教授の森岡正博さん。
「感じない男」は、読んでませんが話題は沸騰している様子。
先日、朝日新聞に投稿されていた短文には、本当に、強く共感しました。(下に引用)
余談ですが、その森岡さんが最近、困っているのが、同姓同名問題=>衆議院選挙候補者の森岡正宏さん。
http://www.m-morioka.com/
主義主張が、ほぼ180度異なる感じなので、多分、お互いに当惑することもあるでしょうね。どちらも、関西だし・・・
<<<森岡正博さんのメッセージ>>> 朝日新聞:2005年7月16日掲載
「考え続ける、自分に決着をつけるために。」 (記事のPDFファイルはこちら)
あなたは中学校に入ったばかりの男の子だ。最近、とてもいらいらする。身体の内側から、なま暖かい溶岩のようなものが、こみ上げてくる。自分の身体が、自分のものではないように感じる。なにか見知らぬものに操られているような、いやな感覚。
朝起きると、下着がねばねばしている。なにか得体の知れないものが始まったのだ。ティッシュで払いてみても、きれいにならない。そっとトイレに行って、家族に知られないように、下着をこっそりと洗うときの、鉛のような気持ち。
誰にも言えない。染みついたものは完全には取れないから、母親は洗濯のときに気づくだろう。でも、話題には出てこない。みんなで気づかないふりをしている、この鬱屈した雰囲気。
僕の身体は汚れている、とあなたは思う。そうじゃないよ、と言ってくれる大人はどこにもいない。汚れた身体をもったあなたは、やがて、寝る前に処理することを覚える。それははじめて知る快感ではあるが、終わったあとの墜落感もはなはだしい。僕はいったいどうしてしまったのだろう。こんなにひりひりとした、誰の助けも呼べない世界に、なぜ放り出されてしまったのだろう。
夜眠りにつく前に、死のことを考えるようになる。僕が死んでしまったら、いったいどうなるのだろう。あの世があるとは思えないから、世界はすべて消滅して、すべては無になってしまう。こうやって考えているこの僕も、消えて無になってしまう。「わあ」と叫んで暖かいベッドから起きあがる。夜中の窓を開けて、破裂しそうな心臓で、誰かに向かって助けを求めたくなる。死んでしまうのに、すべては無になってしまうのに、どうして僕はそんな生を生きないといけないんだ、と。
そう、あなたのその問いは、あなただけがかかえているのではない。想像できないかもしれないが、大人になった私もまたあなたと同じ問いを考え続けているのだ。性を求める行為の果てに、私が直面してしまう死と孤独の謎について。いつか死んでしまうのに、なぜ私は生きなければならないのかについて。他人や世間のためにではなく、自分に決着をつけるために、私はこれらを考え続けることを選んだのである。
(短文だから全文転載しても良いよと、太っ腹なご意見を頂いたので、お言葉に甘えて、転載します。まあ、このブログ読む人は少ないですけど、一人でも、多くの若い人に、届いて欲しいなあというメッセージなので。)
Comments
無痛文明論の序文から~
・・・快にまみれた不安のなかで、よろこびを見失った反復のなかで、どこまで行っても出口のない迷路のなかで、それでもなお人生を悔いなく行き切りたいと心のどこかで思っている人々に、私はこの本を届けたいと思う。
Posted by: 自己レス | 2005.08.26 at 10:45 PM