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個人と社会・公共の福祉、自己決定と道徳・倫理#2

予防接種の問題と囚人のジレンマ問題

 社会と個人を考える良い題材として、予防接種がある。現在のワクチンは、副作用は極端に少ないとはいえ、予防接種には、一定の副作用の危険性が伴う。そこで健康な人が、わざわざ接種を受けて、副作用が出現するのなら、その疾患にかかった方がましという考え方も起きる。もちろん、一昔前の天然痘のように、その疾患に罹患する危険性がそれなりに高く、罹患した時の不利益が非常に大きく、ワクチン接種が圧倒的に有利な場合はほとんど問題にはならない。しかし、現在のように、ほとんどの感染症が減少し、ワクチンの必要性が相対的に低くなってくると、さまざまな考え方ができるようになる。
 よく考えてみると、ある個人にとって、もっとも「得な」選択肢は、自分自身は、ワクチン接種を受けず、周囲の全ての人がワクチン接種を受けることである。その結果、自分の周囲には、その疾患が流行する危険性はなくなるため、感染を受けることはなく、もちろん、ワクチンの副作用を蒙ることもない。だから、「得になる選択肢」は、「他人には接種を勧めて、自分は接種しない」ということになる。
 しかし、これは、明らかに非倫理的な行動だ。一個人にとって、有利な選択肢が、社会の中では、非倫理的とされる好例だと思う。
 さらに、集団発生を防ぐためには、一定の割合の接種率が必要である。たとえば、このような行動を非倫理的と知りつつも行った場合、自分と同じように、非倫理的な行動(他人に勧めて、自分は接種しない)を取る人が、一定の割合を超えた場合、大流行が発生して、接種していない人たちが、不利になる状況が起きうる。この状況は、まさに囚人のジレンマ問題と似ている。
 このようなことを考えると、ワクチンについては、ある程度、社会として一定の態度を取ること・・・つまり、全員に接種を強く要請するか、完全に自由にして推奨を一切しないか・・・が、社会倫理を保つためには、重要だと考えることもできよう。
 ただし、これは、麻疹ワクチンを念頭に置いた話で、当然、個々のワクチンによって状況は異なる。最近、話題になっている日本脳炎ワクチンの場合、人-人感染がないとされているため、隣人が接種しているかどうかは関係ないからだ。

囚人のジレンマ問題については、下記を参照。

http://www.ffortune.net/spirit/sinri/prisoner-dilemma.htm
http://ccs.cla.kobe-u.ac.jp/Jouhou/95/Takahasi/prisoner.html

囚人のジレンマというのは次のようなケースです。

何かの重大事件で二人組の犯人が捕まった。それぞれ別室で取り調べを受け
ている。この時、Aは迷う。自白すれば、かなり長い刑期が待っていそう。
なんとかごまかしてシラを切り通すことはできないだろうか。しかし自分が
犯行を否認している間にBの奴が自白し、自分も共犯であると言ったら自分
の心証が悪くなる。それよりは先に自白して、反省の念を示し、情状酌量さ
れる道を模索したほうが良いのではないか。しかし向こうも頑張っているの
に自分が罪を認めてしまうと、もしかしたら証拠不十分で釈放される道を
自らつぶしてしまうかも知れない。

当然Bの方も同じように悩み、この精神的圧迫から結局両者とも崩れていき
自白に至ってしまいます。このように自分と相手の行動の組合せで良いこと
と悪いことが極端に転換するケースを「囚人のジレンマ」といいます。

上記の場合では

 ・自分が頑張って相手も頑張ればとても良いことがある。
 ・自分が頑張って相手が挫折すると、こちらが手痛い目に遭う。
 ・自分が挫折して相手が頑張っていたら良いことを逃す。
 ・自分が挫折して相手も挫折したら、あまり好ましくない方向に行く。

といったものです。少し書き直すと

 ・自分が頑張り続けた場合
   相手も頑張ってくれたらとても良いが、
   相手が挫折すると、とても悪い。

 ・自分が挫折した場合
   相手が頑張っていたら、けっこう悪い
   相手が挫折していたら、まぁまぁ。

つまり 100点か0点になる道を選ぶべきか、70点か30点になる道を選ぶべきか
相手の行動によって自分の行動の意味が逆転してしまうのが苦しい所です。
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