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脳科学は心にせまれるか?

大げさなタイトルですが、先日、こんな会がありました。
実に面白いシンポジウムでした。

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公開シンポジウム 「近未来の医学・医療を考える(その1) 」

~脳科学は心にせまれるか~

日時:2005年3月26日(土)13:00-16:30
場所:熊本大学医学部総研棟3F講義室

開会挨拶:志賀 潔(医学教育部長)

座長:山本秀幸(細胞情報薬理学)
   粂 和彦(幹細胞制御分野)

1)玉巻伸章(脳回路構造学)
  :心を宿す脳の構造

2)谷藤 学(理研、脳総合機能研究チーム)
  :モノを見る脳の仕組み:物体イメージの脳内表現

3)北澤 茂(順天堂大、生理学)
  :脳の中の時間順序

4)松田博史(埼玉医科大、核医学診療科)
  :脳機能画像による心へのアプローチ

閉会挨拶:山本哲郎(分子病理学)

主催:熊本大学大学院医学教育部・医学部

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以下、参加した学生さん(東北大学医学部・上野太郎君)によるメモを元に、内容を簡単に紹介します。

玉巻先生:
解剖学的な脳の神経回路解析について。脳には、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞が存在するが、興奮性の方が数が多い。しかし、ごく限られた数の抑制細胞が、一群の抑制細胞を支配し、さらに、このそれぞれの抑制細胞が、より数の多い一群の興奮性細胞を支配するという階層構造によって、情報の増幅と処理を行っているらしい。抑制性神経細胞が2重に介在することで、二重否定という論理学的にもより強力な肯定も可能になる。このような構造が、大脳皮質(錐体細胞)についても存在し、複雑な心の働きが生み出されるという。

 玉巻先生の研究紹介
 http://glia-neuron-network.jp/member/34.html


谷藤先生:

脳内における視覚の表現について。ものを見た時、目からの情報は、1次、2次、さらに高次の視覚野に伝達される。1次視覚野の神経細胞は、視野の中の一定の形に反応する。サルの脳による研究で、高次の視覚野では、物の単純な色とか形ではなく、形のパターン(ギザギザか、スムーズかなど)や、位置関係(ある物が、別の物の上にある)などに反応する神経細胞群があることが示された。日常、何気なく「ものを見ている」時にも、無意識のうちに、さまざまなパターン化を行って、脳が視覚情報を解析していることがわかる。

 谷藤先生の研究の紹介
 http://www.riken.jp/r-world/info/release/news/2003/mar/#frol_02


北澤先生:
脳内における時間順序解析について。目をつぶらせて、左右の手を少し時間差をつけて順番に叩き、その順序を判定するという簡単な実験の実演を交えて、脳がどのように時間を判定しているかを示した。不思議なことに、手を交差させるだけで、順番を間違いやすくなる。さらに、手に棒を持ち、その先端のみを交差しただけでも、同じことが起こる。このことは、脳が単純に刺激の時間順序を判定するのではなく、刺激を空間上に位置付けた後に、時間順序 を判断していること、また、その判断にミスが起こりやすいことも示す。ペンを持って字を書く時に、「ペン先の感覚」がわかることも、脳の機能によると考えられる。

 北澤先生の講演の紹介
 http://www.ton.scphys.kyoto-u.ac.jp/~shino/nousemi021218.htm
 ネットサイエンス・インタビュー
 http://www.moriyama.com/netscience/Kitazawa_Shigeru/


松田先生
脳機能画像による心の働きの解析。幻覚や幻聴などを感じる患者では、それに対応して、脳内の高次視覚野や、聴覚野に機能画像上の変化が見られる。また、ある行動を心の中でイメージするだけでも、実際にそれを行った時と同じような変化が起きる。さらに、電流や磁気を用いて脳内の変化を引き起こすことにより、精神疾患の治療や、精神状態に変化を引き起こせる。これらは、心の動きが、ある程度は可視化可能で、また介入も可能な現象である可能性を示した。

 松田先生の仕事の一例
 http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/1005chihou.html


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